研究助成事業東日本大震災への取り組み 
提言(2011年7月1日)

日本の整合性の取れた発展への提言 誠実な相互理解のある復興計画

吉田 雅史

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻
修士課程 吉田 雅史
[助成採択年度] 2010年度
[助成種類] 在外実務

この度の震災におきまして被災者の皆様へお見舞いとお悔やみ申し上げます。僕は現在上海にいるのですが、上海でも、何とかして支援をしなければ、何をしてあげるべきなのか、という声を日本人の方に限らず、多くの国の方々からもいただいております。近いうちに上海からも支援が届くよう、僕自身にできることを行っていきたいと考えています。

さて、今回は「日本の整合性の取れた発展への提言」として、今後の都市形成や復興への提言をさせていただきます。

今後、様々な価値観を持った、様々な方々が復興に参加されることと考えております。都市計画の最先端の理論を携えた方、経済的な復興を第一と考える方、防災意識の極めて高い方、一刻も早く元通りの生活を望まれる方等。それぞれの価値観は決して間違っているものではありません。しかし、多くの場合、それぞれの価値観は衝突し合うので、それらのバランスをどのように取るべきかという話合いをするべきでしょう。しかし、そのバランスの取り方には、妥当性は無いことが多いような気がしています。もちろん最善策を模索していく姿勢は絶対に必要ですが、最終的に何らかのデメリットは現れてくると考えています。重要なことは、これから利用していく住民の方々が、最終的な復興の方向性と、そのメリットもデメリットも引き受けているかどうかだと思います。今までの都市形成においては、各理論が間違っていたのでなく、以上のような点が足りていなかったのではないでしょうか。

そして、そのために、様々な方々の、異なる価値観に対する誠実な相互理解が必要であると考えています。お互いに誠実に、自らの価値観のメリットもデメリットも伝え合い、その上で、お互いに歩み寄る姿勢がなければ、それぞれの価値のバランスを議論することも、住民たちが選択された計画のメリット・デメリットを引き受けることも不可能であるからです。

以上のように、様々な方々が、様々な価値観を誠実にぶつけ合い、認め合い、その中で復興の方向性を取捨選択しながら復興していければ、きっと、世界的な復興を遂げた地方として、東北地方は生まれ変われると信じています。