研究助成事業東日本大震災への取り組み 
提言(2011年9月2日)

主題 「日本の整合性の取れた発展」
副題 エンジニアリングの用い方

田中 正史

岐阜工業高等専門学校
助教授 田中 正史
[助成採択年度] 2008年度
[助成種類] 奨励研究

[1977年] 神奈川県生まれ
[2001年] 東海大学建築学科卒業
[2001年] 空間工学研究所
[2006年] 田中正史建築研究所
[2011年] 東海大学大学院博士課程修了 博士(工学)
[現在] 岐阜工業高等専門学校 助教

そもそもこれ以上発展する必要があるのだろうか?終戦から現在まで様々な災害に見舞われ、その都度復興し社会を立て直してきたが、更に発展した社会を形成することが向かうべき方向か大きな疑問を感じる。日本人は、極端だ。技術の進歩に従って、社会が成熟することは、正しい方向であるが、どの程度までその技術を活用して社会を形成するかは、きちんとした判断をするべきである。例えば、北は北海道から南は沖縄まで、都市から廃村まで、どこででも携帯電話が繋がる必要なんてないはずなのに、全国同じ環境を整備することが正義として携帯電話の会社もユーザーも考えている。この当たり前とする考え方について考えてみると、サービスに矛盾を生じさせないことを目標としているようであるが、同一とすることは、整合性が取れていることを意味するのだろうか。

今後、被災地における復興は、震災を経験したことで生まれるルール作りが必要ではないだろうか。都市計画や建物の性能など基準法で定めた同一ルール上に乗せて考えるのではなく、その地方その風土に適した配慮を考えるべきだろう。私の専門は、建築構造である。多くの建築物は、静的解析を用いて検討するが、実際に建物が地震によって揺れ、地盤まで力を伝達する動的な挙動まで配慮しているとは思えない。全ての構造設計者に高いエンジニアリングを備える必要はないかもしれないが、自然に対する謙虚な姿勢で、建物に外力がどのような形で負荷されるかを想像することはできるはずである。果たして何人の実務者が仕事を行いながら、解析条件と現実の差異を考慮するだけの努力を続けているのだろうか。