顕彰事業 大林賞第8回大林賞受賞者
(2014年)

キャサリン・グスタフソン氏ランドスケープ アーキテクト

キャサリン・グスタフソン氏

キャサリン・グスタフソン氏は、これまで30年以上にわたりランドスケープアーキテクトとして優れた作品を世に送り出してきました。共同設立した2つのランドスケープ設計事務所、グスタフソン・ガスリー・ニコル(米国シアトル)とグスタフソン・ポーター(英国ロンドン)でもその力を遺憾なく発揮しています。グスタフソン氏の作品には彫刻的また感覚的な要素が融合されていて、人々とその空間との一体感が高められるように作り出されています。

初期に手がけたフランスでの一連のプロジェクトは同氏の代表作になっており、その後に手がけた欧州、北米、アフリカ、東南アジア、中東のプロジェクトも高い評価を得ています。これまでに設計した公園や庭園、コミュニティー空間の規模は、ほんの10分の1エーカー(400平方メートル)から1000エーカー(400万平方メートル)の広さにまで及んでいます。

米国芸術文学アカデミーからアーノルド・W・ブルンナー記念建築賞を授与されていますが、これはランドスケープアーキテクトとしてはまだ3人目という快挙です。王立英国建築家協会の名誉会員、そしてフランス建築アカデミーのメダリストでもある同氏は、ASLAデザインメダル、クライスラーデザイン賞、ジェーンドリュー賞を受賞したほか、グスタフソン・ガスリー・ニコル事務所のパートナー達と共に、米国スミソニアン協会のクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館からランドスケープアーキテクチャー部門ナショナルデザイン賞を授与されるなど、輝かしい受賞歴を誇っています。

授賞理由

キャサリン・グスタフソン氏は長きにわたりランドスケープデザインの世界で多くの作品を世に出してきている。同氏の作品は、土地に存在する生態、文化、歴史等を深く読み取り、彫刻的なその土地との一体感を想起させるような空間へと顕在化させ、そこに集う人々の身体、精神などと一体化するような場所を作り出すことで、人間と空間を融合させ、より豊かな人間の生活する場所の創造してきた。そこには、単に空間を新しいものにつくり替え続けるのではなく、土地のもつ特別な魅力を活かして新しい場所を創造するための鍵が隠されている。
今日、世界の人口は過半が都市に居住するようになり、日本では人口減少と都市の縮退が進むであろうと予測されている。こうした時代の変遷に伴い、都市の抱える問題はますます多様化し、社会的、文化的、生態的、経済的にも豊かな人間の生活する場所を核とした持続的な都市の創成が今後ますます重要になると考えられる。このような状況の下で、氏の人間と空間との関係の再生をランドスケープ、場所のデザインを中心に追及するという考えは、都市の様々な事象に携わる人々にとっても極めて影響の大きな視点ではないだろうか。また、そうした理念の下で多くの実績が積み重ねられてきたことは、本財団の設立の趣意にもかなっており、大林賞の受賞に値するものと思われる。