顕彰事業 大林賞第7回大林賞受賞者
(2012年)

アントニ-・ゴ-ムリ-氏彫刻家

アントニ-・ゴ-ムリ-氏

©Lars Gundersen

1950年ロンドン生まれ
アントニー・ゴームリーは、40年近くにわたり、主に人体と空間の関係を考える彫刻作品を制作してきました。「アナザープレース」、「ドメインフィールド」、「インサイドオーストラリア」のような大規模なインスタレーションでは明確に関係がわかる形で、「クリアリング」、「ブリージングルーム」、「ブラインドライト」においては、作品そのものは枠にすぎず、作品を見る側がその枠を通して、作品の一部として見られる側になるという暗示的な方法で関係が示されています。ゴームリーの作品は、彼自身の存在を実験台にして、主観的な経験の場を集団の表現の場に変えています。

1994年にターナー賞、1999年にサウス・バンク賞(ビジュアル・アート部門)、2007年にバーンハード・ヘイリガー賞(彫刻部門)を受賞し、1997年には大英帝国勲章(OBE)を授与されました。王立英国建築家協会の名誉フェロー、ケンブリッジ大学名誉博士、同大学のトリニティ・カレッジおよびジーザス・カレッジのフェローであり、2003年からは王立芸術院の会員、2007年からは大英博物館の理事を務めています。

授賞理由

アントニー・ゴームリー氏は1950年ロンドンに生まれた彫刻家で、経歴が示すようにこれまで世界各国で注目される作品を発表、現在も活発な創作活動を続けています。
都市問題の観点から特筆すべきは、ニューキャッスル/ゲーツヘッドに建てられたエンジェル・オブ・ザ・ノースであり、英国の石炭産業の衰退とともに、重工業に依存したタイン川を挟む2つの都市は経済が停滞、復興のために新たな産業の創生が課題となりました。
市当局は文化財の設置を都市再生の核に据え、契機となったのがエンジェル・オブ・ザ・ノースでした。1998年に完成した両翼間54メートル、高さ20メートルの巨大なコールテン鋼の像は、年間10万人を超すツーリストをこの地域に呼び込むばかりでなく、地域再生の旗印となり、その後、ミレニアムブリッジ(2001年9月オープン)、バルチック現代美術センター(2002年7月オープン)、ザ・セージ(2004年12月オープン)とシンボリックな建造物がこの地域に建設され、地域再生が進展しました。
一般に彫刻家は作品で評価されますが、ゴームリー氏の作品は、作品のみならず、人体と空間の関係のような、思想的背景の理解が必要です。対象となる空間は、原子から宇宙にまで渡りますが、中間に位置する自然や都市に考えが及ぶことは言うまでもありません。
都市は形成されると、そこに思想や文化が生まれ、逆に思想や文化は都市を作りますが、ゴームリー氏の思想や作品が都市の再生に与える影響は大きく、建築設計者や都市計画に携わる研究者を鼓舞し、新たなビジョンを与えるものと考えられます。