顕彰事業 大林賞第9回大林賞受賞者
(2016年)

アレハンドロ・エチェベリ氏建築家、コロンビア・メデジン市出身

アレハンドロ・エチェベリ氏

アレハンドロ・エチェベリ氏は、都市デザイナーには社会の向上に貢献する倫理的責任があるとの信念を抱いています。無秩序、排他的、不公正という複雑で不安定な現実に追われる新興地域が学際的チームのリーダーとして特に注力してきた課題です。社会・地域発展の基盤となる建築プロジェクトやアーバンプロジェクトのプロセス開発に強い関心を抱き、傾注してきたエチェベリ氏は、革新的な手段を用いて、政府機関や民間組織、地域社会とのつながりを築く柔軟で包括的なエコシステムを形成してきました。エチェベリ氏の仕事は、継続的な学習プロセスとしてのデザインで達成された高い革新性と独創性を特徴としています。

2004年から2008年には、メデジン市長セルジオ・ファハルド氏の支援と協力のもと、都市デザイン局ゼネラルマネジャーとして、また、市のアーバンプロジェクト・ディレクターとして、最貧困地域の改善を図る社会的な都市化戦略を推進しました。この結果、メデジン市は世界中の貧困都市にとって将来の青写真と見られるようになったのです。

2010年からは、自身が創設を率いたEAFIT大学都市環境研究センター(URBAM)のディレクターを務めています。URBAMは新興・発展途上国の中でも特に政治機構や制度的構造が脆弱な国の都市問題、環境問題、社会問題を詳しく調査しており、現在はアクション・シティーズ・ネットワークとの共同プロジェクトに取り組んでいます。

また、自身のアレハンドロ・エチェベリ+バレンシア設計事務所でも、環境への影響を抑えたプロジェクトを中心に、意欲的に設計活動にも取り組んでいます。

こうした業績はこれまでにコロンビア国家建築賞SCA(1996年)、汎米都市計画ビエンナーレ賞(2008年)、カリー・ストーン設計賞(2009年)、ハーバード大学が選出する第10回ベロニカ・ラッジ・グリーン都市設計賞(2013年)など、数多くの表彰をうけました。

授賞理由

アレハンドロ・エチェベリ氏は市街地の70%がスラム街、住民10万人につき381人が犯罪で殺害されるという世界で最も危険な都市とも言われていたコロンビアのメデジン市で、2004年から2008年にかけて当時のセルジオ・ファハルド市長が推進した、同市を「教育」で再生するという大胆な公共プログラムにおいて、都市開発ディレクターとして中心的役割を務められました。教育の向上を都市再生の核と位置付けるとともに、「最も貧しい地域に最も美しい建築を」をテーマに、長らく見放されていた貧困地域の人々に連帯感を築き、希望の種をまこうというプロジェクトで、建築家としての高い見識と優れたリーダーシップを発揮されました。市街地を走る鉄道にスラム街へ通じるロープウェイや野外エスカレーターを連絡させ、或いは貧困地区に著名な建築家による5つの公園図書館、美術館を整備するなど多彩な政策を通じて、スラム街の住民には教育の場所と機会を提供し、市中心部へのアクセスを容易にすることで就業の機会を増やし、逆にスラム街へはほかの地域に住む住民や観光客のアクセスを促進するなど、貧困と対立の解消、或いは地域住民の連帯、犯罪の抑制というメデジン市の改革、復興に大きな貢献をされました。これらの政策により改善されたメデジン市は2013年、米紙ウォールストリート・ジャーナルとシティグループが実施した「最も革新的な都市」コンテストでNYとテルアビブをおさえ第1位に輝きました。
貧困や対立、犯罪や疎外などといった都市の抱える多くの問題に対して、大胆な発想で多くの協力者とともに教育、建設、交通、文化、福祉等にまたがる総合的な都市再開発政策に真摯に取り組み、かつ大きな成果を生み出した氏の功績は、本財団設立の趣旨にかない大林賞の授賞に値するものと考えます。