制作助成事業 2019年度 採択者

2019年度 採択者

シアスター・ゲイツ氏

Photo: Rankin

シアスター・ゲイツ氏

1973年、イリノイ州シカゴ生まれ、同地在住。シアスター・ゲイツ・スタジオは、ゲイツの芸術的実践の場として築かれました。ゲイツは地域論や土地開発に注目した作品や彫刻、パフォーマンスを生み出しています。都市計画・保存計画に対する関心と経験を活かして、見捨てられた地域を蘇らせ、場所についての語らいをコンテンポラリー・アートの最前線へと導くことで、アートと生活の隔たりを埋める活動を行っています。

ゲイツの創作は「ものに宿る生命」の可能性への着目に根ざし、アートの価値、土地の価値、人間の価値のいずれをも向上させることで、アートの世界における資本の再循環を構築しました。その作品に通底しているのは、黒人のスペースを正統的に(公的に)つくりたいという共有の願いを、アートの力と社会的実用性にのっとって実現させようという意識です。

■主な展覧会

2019年 「The Black Image Corporation」グロピウスバウ(ベルリン)
「Amalgam」パレド・トーキョー(パリ)
2018年 「The Black Image Corporation」プラダ財団(ミラノ)
「Black Madonna」シュプレンゲル美術館(ハノーファー)バーゼル美術館(スイス)
2017年 「In the Tower」ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)
2016年 「How to Build a House Museum」オンタリオ美術館(トロント)
「Black Archive」クンストハウス・ブレゲンツ
「True Valu」プラダ財団(ミラノ)
2013年 「Soul Manufacturing Corporation」ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)
「Prima Materia」プンタ・デラ・ドガーナ(ヴェネチア)
2012年 ドクメンタ(13)(カッセル)

■主な受賞歴

2018年 ナッシャー彫刻賞
2017年 クルト・シュヴィッタース賞、フランスのレジオン・ドヌール勲章
2014年 アルテス・ムンディ

■主なパブリックコレクション

バーゼル市立美術館(バーゼル)、オンタリオ美術館(トロント)、ロサンゼルス・カウンティ美術館(ロサンゼルス)、シカゴ現代美術館(シカゴ)、サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)、スミソニアン・アメリカ美術館(ワシントンD.C.)、テート・モダン(ロンドン)、ホイットニー美術館(ニューヨーク)など

委員長コメント

シアスター・ゲイツの作品をはじめて体験したときの記憶は忘れがたい。古い建物の階段をあがり部屋に入ると、空き家だった部屋に古い建材や壁紙といった廃材が丁寧に再配置されていることに気付く。その模様や形をじっくりみているうちに、ごく自然にハーブティーをすすめられた。それはカッセルの街を歩き回り、少し疲れたからだに染み入る。別の部屋に進むと歌が聴こえてくる。情感たっぷりだが全体の佇まいとなじんだ音量でブルースやジャズが流れてくる。とても居心地よく、親密な気持ちをおぼえる体験だった。
その後すぐに彼がシカゴで実践しているドーチェスター・プロジェクトのことを調べた。これは建物の再生と異なる世代が参加できるコミュニティプログラムを実践するゲイツの代表的なプロジェクトのひとつだが、もっと驚いたのはゲイツが作陶のためにほぼ毎年のように日本を訪れていると知ったことだ。シカゴに住むアフリカ系アメリカ人のアイデンティティと深く関わる空間や作品の制作と、常滑地方で継続している作陶がいったいどのようにむすびつくのか。強大な資本が個人の精神を荒廃させてしまう現代社会において、自分たちで生産し、共同体のつながりを復活させようとする彼の仕事は民族の違いを簡単に超えてしまうだろう。そして作陶だけにとどまらない提案やプロジェクトを日本で見てみたいというのが、選考委員が一致して望んでいることだ。
今や世界中を飛び回るアーティストだが、おそらくもっともよく知っている国のひとつでどのような都市のヴィジョンを見せてくれるのだろうか。前回の対象者である会田誠とは異なるものになり、この助成事業が持つ可能性を押し広げてくれることをとても期待している。

アーツ前橋 館長
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 准教授
住友 文彦