制作助成事業 2023年度 採択者

2023年度 採択者

イム・ミヌク氏

イム・ミヌク氏

1968年生まれ。アーティスト。執筆、音楽、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど、さまざまな表現手段を取り入れ、思考の幅を拡張して、ジャンルやメディアの境界を超えた多様な作品を制作。彼女の創作活動は、歴史の喪失、断絶、抑圧されたトラウマを想起させる。言語活動、あるいは表現の政治学に基づいた彼女の作品は、そのパフォーマティブな彫刻的オブジェやインスタレーションにおいて、過去の出来事の単なる再現ではなく、構造から立ち現れる非人間的な視線の存在を想像させ、気づかせることで、経験、記憶、感情を呼び覚ます。

委員長コメント

パンデミックによる混乱を経験した後、社会が少しずつ日常を取り戻していくなかで、第4回助成対象者の選考が始まりました。アーティストによる都市のあり方の自由な研究・考察を支援する本助成は、私たちが経験したさまざまな困難や制約を思い起こすとき、その意義と可能性がますます実感されるものとなりました。
このたびの選考では、変革期の只中にある現状を意識しつつ、より広い視野で都市と社会に向き合い、ひとつの解に収飲されることのない実践が期待されるアーティストに注目しました。加えて、これまでにも候補に挙がったものの採択に至らなかった地域のアーティストを選出したいという委員の総意もありました。過去3回の選考においてまだ選ばれていない、(単独で活動する)女性アーティストを優先したいという意見もあり、これらの議論の結果として、韓国出身・在住のイム・ミヌクが選出されました。
活動の初期から、自国の急速な民主化・近代化および都市開発がもたらしたコミュニティの分断や歴史の喪失をテーマに作品を制作してきたイム氏は、困難にあってなお人々に潜在する連帯への希求とそれが持つ可能性を、綿密なリサーチと多彩なアウトプットによって詩的かつ大胆な表現へと昇華させてきました。
イム氏は、韓国ではコミュニティの精神的な支柱となる信仰や伝統が失われてしまったと感じています。それに対し、日本の祭りではそれらが継承されていることに大きな関心を寄せ、本助成のリサーチの起点としました。とりわけ水と火にまつわる古来の儀式を調査し、東京の河川と架空の海を接続させることによって、歴史や社会が規定してきた枠組みや境界の存在、そして本来的には自由にたゆたう水が示すものごとの両義性を照射します。参加型パフォーマンスツアーおよび展覧会としてリサーチの成果を発表したいという提案からは、探求の先にある答えがひとつではないことと、多義性を許容する姿勢が印象的で、硬直化した現代社会からの脱却と未来のために私たちが進むべき道=ヴィジョンを提示してくれるアーティストであると考えました。

東京オペラシティアートギャラリー
シニア・キュレーター
野村 しのぶ

イベント

パフォーマンス 「S.O.S - 走れ神々」
屋形船によるイベントを開催しました。抽選で選ばれた154 名の方々が乗船されました。

  • 会期
    2024年3月2日(土)、3日(日) 17:00 -18:30
  • 会場
    隅田川屋形船 (「越中島桟橋」発着、東京都江東区越中島1丁目先越中島公園内)

[Photo: Shun Sato]

芭蕉庭園でのパフォーマンス[Photo: takaramahaya]

パリの恋人たち[Photo: Shun Sato]

2隻の屋形船[Photo: Maria Nanashima]

晴海緑道公園でのパフォーマンス[Photo: Shun Sato]

展覧会「Hyper Yellow」

  • プレビュー
    2024年2月29日(木) 16:00-
  • 会期
    2024年3月1日(金)- 12 日(火) 12:00 -20:00
  • 会場
    駒込倉庫(東京都豊島区駒込 2-14-2)

[Photo: Shun Sato]

[Photo: Shun Sato]

[Photo: Shun Sato]

トークイベント
本プロジェクト開催にあわせて、イム・ミヌクのトークイベントを開催しました。

  • 日時
    2024年3月4日(月) 17:00 -18:30 (開場 16:30)
  • 会場
    (株)大林組 30 階レセプションルーム
    品川インターシティB棟30階(東京都港区港南2丁目15番2号)

[Photo: Shun Sato]

[Photo: Shun Sato]

左から、同時通訳、イム・ミヌク氏、紺野優希氏、権祥海氏[Photo: Shun Sato]

※イベント等の詳細についてはこちらよりご覧ください。