顕彰事業 大林賞大林賞受賞記念
シンポジウム

第3回大林賞授賞式・
受賞記念シンポジウム

  • 開催日
    2004年10月28日
  • 主催
    公益財団法人 大林財団
  • 協賛
    株式会社大林組

授賞式

2004年10月28日、「第3回大林賞」の受賞者であるジェルマン・ヴィアット氏を迎え、大林賞の授賞式と受賞記念シンポジウムを開催いたしました。
ヴィアット氏は、近代・現代美術の専門家として広く知られる一方、ポンピドゥ芸術文化センター(パリ)やマルセイユの美術館群の整備など、都市の魅力が引き出されるような、社会との接点としての機能をもつ美術館整備を考え、その運営においても優れた業績を残してきました。そして現在は2006年開館予定のケ・ブランリー美術館(パリ)ミュゼオロジープロジェクトのディレクターとしてご活躍されています。
授賞式後に開催されたシンポジウムでは、まずヴィアット氏によって講演が行われ、これまで参画された美術館プロジェクトを中心に、「フランスにおける美術館の変遷」や「建築と都市づくりにおける芸術家と美術館が果たす役割」などが語られました。
そして講演に引き続き、以下のようなパネルディスカッションが繰り広げられました。

  • 大林理事長と握手をするジェルマン・ヴィアット氏(中央はヴィアット夫人)

    大林理事長と握手をする
    ジェルマン・ヴィアット氏(中央はヴィアット夫人)

受賞記念シンポジウム

「美術館が都市を変える」

パネルディスカッション「サスティナブルな地域デザイン」

モデレーター 伊東順二氏 長崎県美術館館長、美術評論家
パネリスト ジェルマン・ヴィアット氏
佐々木雅幸氏 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
槇文彦氏 建築家

美術館建築は時代を反映するものである。20世紀の美術館革命といわれるポンピドゥー芸術文化センターは、建物の中に都市があるような美術館を意図して、周到な計画のもとに建設された。一方、ケ・ブランリー美術館は都市に溶け込んだ建物であり、「有機的なネットワークをつくりたいという意志を反映している」とヴィアット氏は説明。そして、美術館の可能性について、「これまでのようなコレクションを集めた文化施設というだけでは定義として狭い。社会の変化をこえて、人と作品とが対峙する場であることが重要である。美術館は作品を通して人々に疑問を与えるべきものであり、そこから対話が生まれ、人々が様々なことを考える契機となる」と語った。

  • シンポジウムで講演するジェルマン・ヴィアット氏

    シンポジウムで講演するジェルマン・ヴィアット氏

槇氏は、東京のような非定住社会、ポスト・モダン社会では、アートと都市の間に新しい対話の機会が増えているとし、21世紀の都市では、人と人、人と場所、場所と場所の出会いを通じた新しい可能性の追求が重要であり、夢を育み続ける人間の孤独と自由を保証する都市にこそ、文化的創出を目指すエネルギーの本質があると述べた。
佐々木氏は、都市が抱える問題の解決に貢献している美術館の例を挙げ、美術館に寄せる期待は大きいと述べた。しかし日本では、ヴィアット氏のような卓越したマネジメント能力をもつ人材が不足していると指摘した。 最後に、美術館はアーティストと観客が響きあう装置として機能し、これによって都市そしてそのコンテンツである人間が活性化することを再確認して、ディスカッションは締めくくられた。

  • 伊藤順二氏、ジェルマン・ヴィアット氏

    伊藤順二氏、ジェルマン・ヴィアット氏

  • 佐々木雅幸氏、槇文彦氏

    佐々木雅幸氏、槇文彦氏

受賞者プロフィール

ジェルマン・ヴィアット(Germain VIATTE)
ケ・ブランリー美術館ミュゼオロジープロジェクト ディレクター
1939年カナダ生れ。
ソルボンヌ大学卒、エコール・ド・ルーブル高等部門卒。
67年「国立現代美術センター」の創設に関わり、69年からは「国立ジョルジュ・ポンピドゥ芸術文化センター」開設準備を担当。同センターで学芸員(1975-85)、国立近代美術館・産業創造センター館長(1992-97)を歴任。 85年マルセイユ美術館群の館長に就任し、市内の美術館の連携を考慮した整備をすると共に、様々な展覧会を企画。
フランス美術館局の主席監査官(1989-91)を経て、97年からはケ・ブランリー美術館(設計:ジャン・ヌーベル、2006年開館予定)の準備を統括している。ケ・ブランリー美術館では、アフリカ、アメリカ、アジア及びオセアニアの文化と芸術を紹介する予定。
http://www.quaibranly.fr