顕彰事業 大林賞大林賞受賞記念
シンポジウム

第5回大林賞授賞式・
受賞記念シンポジウム

  • 開催日
    2008年11月25日
  • 主催
    公益財団法人 大林財団
  • 協賛
    株式会社大林組

授賞式

2008年11月25日、「第5回大林賞」の受賞者であるマーク・レヴィン氏を迎え、授賞式と受賞記念シンポジウムを開催いたしました。
レヴィン氏は、長年にわたり、環境とエネルギーに関する研究の普及と、政策展開に向けた活動を精力的に行なわれてきました。現在は、ローレンス・バークレイ国立研究所の主席研究員として活躍されていますが、2007年にノーベル賞を受賞したIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)の 主要メンバーの一人として、第2次~第4次レポ-トの建築における緩和技術の章の責任執筆を務められました。
授賞式に続き開催されたシンポジウムでは、レヴィン氏による基調講演、そしてパネリストの短いプレゼンテーションの後、パネルディスカッションが行われました。

  • 大林理事長から表彰状と賞金、記念品が手渡された

    大林理事長から表彰状と賞金、記念品が手渡された

受賞記念シンポジウム

「建築における地球温暖化対策-IPCCの視点から」

シンポジウム

基調講演 マーク・レヴィン氏 ローレンス・バークレイ国立研究所主席研究員

  • シンポジウムで講演するレヴィン氏

    シンポジウムで講演するレヴィン氏

パネルディスカッション

パネリスト ダイアナ・ウルゲ=ウォルサット氏 ローレンス・バークレイ国立研究所主席研究員
吉野博氏 東北大学大学院教授
中上英俊氏 住環境計画研究所所長
モデレーター 村上周三氏 建築研究所理事長
  • 満席のシンポジウム会場(来場者 約450名)

    満席のシンポジウム会場(来場者 約450名)

レヴィン氏は、IPCCの成果や現在研究を進める中国の現状を紹介した。
レヴィン氏は、近年のCO2排出量増加は中国の劇的な経済成長に多く起因すると説明 し、中国政府によるエネルギー効率化への取り組みや政策案を紹介した。IPCCの報告においては、建築分野におけるCO2排出量は全体の1/3を占めているとしており、今後、温暖化対策に担う建築分野の役割は極めて大きいと語った。今後の対策として、ITの活用によるエネルギー消費の効率化や施工者への知識移管による技術の市場展開、低エネルギー設計に補助金を提供するコンペティションの開催などを提案した。
続いて行なわれたショートスピーチでは、ウォルサット氏は、建築的な工夫で自然エネルギーを活用する「パッシブ・ソーラー」によるヨーロッパ各国の成功例を紹介。それらが低コストと経済的メリットを共に実現できると示した。
吉野氏は、日本のエネルギー消費の現況を紹介し、今後は、既設建築へのCO2削減技術の導入が大きな課題になると語った。また、現在のエネルギー消費の実態と人々の意識に格差があることを示し、実態に則した取り組みが大きな効果をもたらすと説明した。
中上氏は、家庭用エネルギー消費が急速に上昇している途上国の現況について紹介した。とくに、農村部では薪や農業廃棄物が主要エネルギーとして利用されており、それらのエネルギー効率を高めることが重要と話し、そのためには、先進国による技術や機器の提供が不可欠であると語った。
ディスカッションでは、IPCC第5次レポートについての展望や、今後のアジアへの取り組みについて意見交換が行われた。日本はクールビズなど温暖化対策への意欲的な取り組みがあるだけではなく、省エネ技術の先進国であり、これら技術や取り組みをアジアへ普及すると同時に人材育成を行っていくことが、今後、地球温暖化の緩和に大きく貢献できるとした。また、建築分野には、現在の先進技術を都市スケールでも展開することを期待したいと語られた。

  • ウォルサット氏

    ウォルサット氏

  • 吉野氏

    吉野氏

  • 中上氏

    中上氏

  • 村上氏

    村上氏