研究助成事業東日本大震災への取り組み 
提言(2011年7月1日)

大震災以後の「日本の整合性の取れた発展」

高見沢 実

横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 都市イノベーション部門
教授 高見沢 実
[助成採択年度] 2008年度
[助成種類] 研究助成
[ホームページURL]
http://er-web.jmk.ynu.ac.jp/html/TAKAMIZAWA_Minoru/ja.html
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/

1958年生まれ
1986年東京大学工学系研究科 博士課程修了
工学博士

専門分野: 都市計画、まちづくり、地域
併任・教育担当: 工学部 建築学科 建築学コース
理工学部 建築都市・環境系学科 建築教育プログラム
大学院都市イノベーション学府 建築都市文化専攻
大学院都市イノベーション学府 都市地域社会専攻
大学院都市イノベーション学府 都市イノベーション専攻

貴財団から平成20年度に助成をいただいた「地方都市再生のための新しい事業組織・計画フレームに関する研究」は、人口減少時代の日本の地方都市が既に「緊急時」ともいうべき衰退期に入ったとの危機感から、これまでの方法にとらわれない新しい都市計画の方法、人材育成、産業振興、地域活性化の方法を模索したものです。それを先進的に経験していた英国の経験から学び日本の現状を認識することで、一定の成果が得られたと考えています。

大震災等による被災地の復興のみならず、もともと構造的に疲弊しつつあった地方都市、今後高齢化や空き地・空き家化が急激に進むと考えられる大都市郊外部など広範な地域に対して、本研究は普遍的な方法論を示し得ているのではないかと思います。つまり、制度に頼る「受け身」の都市計画から、人材やアイデアをベースとし、そうした意欲を支援しながら地域を活性化する都市計画への脱皮です。そこには優れたビジネスが展開できる事業者が欠かせません。また、それをバックアップしさらにそのエネルギーを波及させる地域のマネジメント組織、大学やNPOとの連携も必要です。

こうした状況では「公共性」とは予め決められたものではなく、その場その場で皆が共感し創り出すイノベイティブなものになるはずです。国の財政も、これまで想定してきた公共性に対して自動的に振り分けるのではなく、新たな公共を創り出せる主体や事業に戦略的かつ重点的に投資すべきです。また、その際には単に現状に対して投資するのではなく、担い手を育てる視点が重要です。被災地においても、ややもすると予め国が決めた基準だけで公共投資がなされがちです。それでは次の担い手が持続的に育ちません。人づくりを通して各地に元気なビジネスが育ち、さらにそこにイノベーティブな公共が生み出されるような社会をめざしたいと思います。