研究助成事業東日本大震災への取り組み 
提言(2011年7月1日)

震災提言

東京大学 工学系研究科 社会基盤学専攻
特任講師 長井 宏平
[助成採択年度] 2010年度
[助成種類] 研究助成

世界に先駆けて超高齢社会を迎える日本では、特に地方での高齢化・過疎化は深刻である。近年、過疎地域における「限界集落」(人口の半数以上を65歳以上の高齢者が占める集落)の問題が表面化し、消滅へと向かう集落も散見されている。人口動態予測からは、これは遠くない将来に日本の地方全域に共通の問題となることが予想されるが、特に離散的に存在する集落がそれぞれ縮退するなかで、いかに集落を維持していくかの施策は示されていない。また、財政の面から住民の生活を維持するための公共サービスも縮小せざるを得ない中であっても、住民が「誇り」を保ちながら生活できる環境を整えることは、社会基盤の使命である。

今回の被災地域も、そのような地域が多くあると考えられる。被災地域に人が戻ってくるのか、産業復興を含め今後人々の生活はどのように成り立つのか、先は見えていない。ここにどのようなインフラや公共サービスなどの社会基盤を復興整備することが人々の幸せに貢献できるのかは、技術にのみ立脚した思考では到底成しえない。地域の持続再生には、住民個人やコミュニティとしての豊かさと、公共サービスの維持、広域の計画、更にそれを実現する技術とが整合性を保つ将来ビジョンが必要である。