研究助成事業東日本大震災への取り組み 
提言(2011年7月1日)

人口縮小時代の都市ビジョンと震災復興

山家 京子

神奈川大学 工学部建築学科
教授 山家 京子
[助成採択年度] 2008年度
[助成種類] 国際会議

地形に抗しない

私たちはこれまで、元来人の住めなかった土地を、河川の治水、埋め立て、丘陵地の造成など土木工事によって可住地に変えてきた。開発時には原地形に配慮しながらも、そこに住む人が原地形を意識する機会は少ない。私たちは自然、地形に対してもっと謙虚にならなければならない。これまでも繰り返し都市災害と原地形との相関が指摘されており、いったん切り崩した自然を元に戻すには大変な時間がかかる。

小さな単位で考える

これから人口は減少していく。2055年には1955年頃の人口(9,000万人弱)と予想されている。震災復興に際し、新たに用地を取得してニュータウン建設するのではなく、既成市街地に生活圏あるいはコミュニティなど小さな単位を埋め込んでいくことを検討するべきである。雇用や福祉などネットワークごと埋め込んでいく。開発は成長期の手法であり、住宅地のサスティナビリティを確保できない。

また、成長期にあって土地利用は純化が進められてきたが、人口減少に伴う過渡的な歯抜け状態の現状を考えたときには、土地利用の混合も検討すべきである。小さな単位での活力を維持するために、徒歩圏での生活基盤整備は大事である。

効率を求めすぎず、シンプルに考える

私たちはこれまで問題を解決するために、また便利さと豊かさを手に入れるために、技術を携えて前に進んできた。重工業の時代にあっては、生産・消費ともにエネルギーを使えば煤煙をまき散らすなど、自然への負荷状況が自ずと見えていたように思う(「見える化」をあえて用意しなくとも)。現代社会はコンピュータ制御をはじめ、ブラックボックスの部分が大きくなり過ぎてしまった。見かけがクリーンでスマートになればなるほどブラックボックス化する。

コントロールできないものは作らない。動力を外した素の状態をイメージしてみる。ものごとをシンプルに考えてみる。これからの生活の理念を考えたとき、それを支える都市、そして震災復興のあり方も自ずと見えてくるはずである。